
失った輝きを取り戻すには、どうしたらいいのか。2場所前までは綱取りに挑み、次のスター力士と誰もが認めていたのが稀勢の里(27)だった。それがたった4カ月足らずで若い遠藤らにとって代わられ、ひと山いくらの力士になってしまった。
勝負の世界の消長の激しさ、非情さを改めて痛感させるが、それをまざまざと見せつけたのが、一般公開で行われ、8000人ものファンが詰めかけた先月29日の稽古総見だった。
日馬富士や鶴竜ら、横綱との申し合いでは2勝9敗と散々。「3横綱を吹っ飛ばすぞ、という気迫と実行力がみられない」と内山委員長にため息をつかせただけでなく、締めのぶつかり稽古でも白鵬に指名され、全身砂まみれにされて這いつくばった。
白鵬のかわいがりは先月20日の茨城県笠間市巡業に次いで2度目。何をモタモタしているんだ、早く(横綱に)上がってこんか、という叱咤の意味合いがあったかもしれないが、大関に対しては異例。他の力士たちの前でヒザで小突かれ、土俵下まで突き落とされては大関の威厳も何もあったものではない。稀勢の里もこの若手力士並みの扱いは計算外だったようで、最初にヤラれたときは「予想外でした。まあ、光栄なことじゃないですか」と渋い顔だった。
この木っ端微塵にされたプライドを修復し、半年前まで一身に集めていた日本人力士のホープとしての期待を取り戻す方法は1つしかない。白星を積み上げ、若手何するものぞ、という違いを見せつけることだ。今場所でいつにも増して静かなのは、まあ、見ていてくれという思いが強いからかもしれない。
夏場所は相性がよく、昨年、一昨年と優勝争いに加わっている。3度目の正直はなるか。 (大見信昭)