
あと数分でPK戦突入、体力も精神力も極限に近づいていた延長後半13分だった。アルゼンチンは中央でパスを受けたメッシがドリブルを開始。猛然と足元を襲うタックルをひらりとかわすと、DF2人を引き寄せて右にスルーパス。フリーで受けたディマリアが左隅に蹴り込み、ついに均衡を破った。ベンチから控え選手もピッチに乱入し、喜びを爆発させた。
4試合連続ゴールこそならなかったが、試合を決定づけたのはやはりメッシだった。「これがフットボールさ。今日の運は僕らに味方したね」。薄氷を踏みながらも120分の死闘を制し、エースは胸をなで下ろした。
1次リーグ初戦から4連勝。結果だけを見れば文句はないが、優勝候補と呼ぶには今ひとつ物足りない。
スイスの奮闘はたたえられるべきにせよ、この日もボール支配率61%と圧倒しながら攻めあぐねた。放ったシュートは実に29本。だが、決定機はごくわずか。前半は逆に集中力の欠如から危ないシーンもあった。
サベジャ監督は「最も重要なのは勝ったことだ」と試合内容には目をつむる。とはいえ、他の強豪に比べて組み合わせに恵まれたにもかかわらず、いずれも1点差の辛勝。圧倒的な力量を持つメッシへの依存はいやでも目立つ。
それでも、指揮官は「後半は明らかにわれわれが上回った。批判を受けることは何もない」とあくまで強気を貫く。準々決勝でぶつかるのはベルギー。対戦相手がより強くなる次からの戦いで、アルゼンチンの真価が問われる。(細井伸彦)