
年明けから、真鍮(しんちゅう)製やアルミ製の「消火ホースの筒先」が盗まれる被害が和歌山県内で相次いでいる。3月には有田市で68本分、その後の調査でさらに4件の盗難が判明した。紀の川市で約170本、岩出市でも約60本の被害が昨年度末にかけて明らかになり、同一犯・グループによる犯行の可能性もあるという。数年前から全国的に横行している金属盗。なぜ狙われるのか。現状を探った。(兵頭茜)
■避難訓練の点検で…
「ここにもない」「こっちでもなくなってる」
3月半ば、有田市内で消防団員らが格納庫を点検したところ、ホースの先端についているはずの真鍮製の筒先だけが消えていた。格納庫は各自治会が管理し、避難訓練に合わせて点検したところ、盗難に気づいた。
「もしや他でも」と市が各自治会などに点検を呼びかけたところ、盗難被害が次々に判明した。市防災安全課によると、市内の被害は中央、保田、宮原、初島など7地区72件に上った。
筒先は、消火時に水の勢いをつけるためホースの先端に装着する部品で、1万円程度といい、各自治会が購入。格納庫の多くは、屋外の消火栓の付近に設置されている。
■数年前から各地で
金属窃盗は、中国の経済発展による金属需要の高まりとともに発生が増えたとされ、北京五輪前の平成17年ごろから全国的に被害が相次いだという。
盗まれたのは、「グレーチング」と呼ばれる格子状の側溝のふたやマンホール、工場の銅線などさまざま。中には公園の車止めや電線まで被害に遭った。県内でもこのころ、金属盗難が多発したという。盗まれた金属は、金属回収業者に持ち込まれ、換金されるケースが多いという。
■消火用、施錠も困難
有田市防災安全課によると、消火ホースは、火災発生時に消防署や消防団が到着するまでの間、地元住民が初期消火をするためのもの。鍵をかけるわけにもいかず、「盗難防止へ有効な対策は見つかっていない」(同課)というのが実情だ。
こうしたなか、市は各自治会にこまめな点検を呼びかける一方、格納庫の扉に粘着テープを貼るという対策を提案している。鍵がかけられない代わりに、粘着テープによって一定の予防効果がみられ、盗まれたときに外見で判明しやすくなるためだ。さらに市担当者は「被害に遭わなかった筒先を、被害に遭った住宅密集地に持ってきたりと調整することも提案している」と話す。
“いざというとき”に欠かせない消火設備。火災が広がれば大きな人的被害につながりかねない。「各自治会に呼びかけて、できる限りの対策をしたい」と市担当者。県警では「万一の時に必要なもの。早期の犯人逮捕に努めたい」としている。