
「メジャーは何でもフェアにやろうという意識が徹底しています。なのでローテーションも公にするし、日本の球場のようにブルペンを見えない場所に造るようなこともしない。そんな話は聞いたことがありませんし、たまたまア・リーグのチームと対戦しないというだけではないでしょうか」
こう言うのは、野球評論家の吉井理人氏。「そんな話」とは、スポーツ紙が盛んに騒いでいる「マー君隠し」のことだ。
田中将大(25)の過去2回のオープン戦登板はいずれもナ・リーグが相手。この日もシート打撃登板で、今後もこのままの登板間隔なら、開幕までア・リーグ相手に投げる予定はない。ヤンキースはあえて田中をナ・リーグ戦で投げさせ、レギュラーシーズンで対戦の多いア・リーグのチームに対しては隠しているというのだ。
それがヤンキース首脳陣の意思か、まったくの偶然かはともかく、田中がオープン戦でナ・リーグ相手にしか投げないのは、本人にとってプラスかマイナスか。
■「隠すメリットは限定的」と吉井氏
田中にとって手の内を隠せる一方で、対戦しなければ打者の特徴を把握することもできない。同一リーグに投げないことが開幕後、どう影響するのか。
「投手も打者も、ビデオで見るのと、実際に対戦するのとでは明らかに感覚が違います。ただ、打者は受け身だけに、初対戦では投手が有利でしょう」と前出の吉井氏がこう続ける。
「投手はシーズンが始まれば、予備知識として相手打者の特徴を頭に入れてからマウンドに上がります。実際に対戦したときの感覚は多少、違うものですけど、だいたいイメージ通りです。それでも投手が有利なのはひと回り目だけ。シーズンが長丁場であることを考えたら、さほど影響はないように思いますね」
グラウンドで対戦しなくても、すでに同地区のレッドソックスやブルージェイズは過去2回の登板にスカウトを送り込んで、田中の投球を映像で解析。ウイニングショットのスプリットも含めてDVDが劣化するほど研究している。
仮に「隠した」としても、吉井氏が指摘するようにメリットは限られる。「それより何より田中にとって大切なのは、きちんと自分自身のピッチングができるかどうか」(吉井氏)なのだ。