
今世紀に入ってから凪の状態が続いていた、巨人の正捕手争いに世代交代の大波が到来だ。ドラフト1位の小林誠司捕手(24)=日本生命=が、阿部慎之助捕手(35)を脅かす絶対的な武器とは。
10日の広島戦(東京ドーム)に競り勝ち、単独首位に返り咲いたチームの立役者は、同級生バッテリーだった。
中5日で先発した菅野は7回途中2失点で開幕3連勝。プロで初めてコンビを組んだ小林を横に「大学時代からやっている。まさかこうやって同じユニホームを着て、2人でお立ち台に立てるなんて夢にも思わなかった。同級生ということもあり格別な気持ち」と感慨深げに語った。
同い年の気安さから登板前に組み立てを話し合い、試合中も意見交換。プロでは1年先輩の菅野が、早打ち傾向の広島打線に初球から勝負球に入る必要性などを説いた。
小林は「僕はリードしたというより、リードしてもらった。智之もいろいろ教えてくれた」と話したが、原監督は「智之との呼吸もよかった。何より打撃もいい。1日1日、力をつけている」。3打数3安打でプロ初の猛打賞を記録したバットでの活躍もほめた。
大きな印象を残したのは強肩だ。1回と3回に二盗を阻止。菅野も「走者が出るたび“任せてくれ”とジェスチャーと声かけをしてくれたので心強かった」と笑った。
本紙評論家の須藤豊氏は「どこの球団でもそうだが、正捕手が取って代わるきっかけはリードでも打撃でもない。肩だ。経験を持っている大ベテランでも補いようがない部分。今日は阿部が一番、いい刺激になったでしょう」と直言する。
故障明けの阿部は4試合ぶりに途中出場。8回2死一塁で菅野から山口に投手交代する際、捕手もスイッチ。「阿部さん、お願いします。すいません」と後を託す後輩を「ナイスキャッチャー」とねぎらい、後続を打ち取った。その裏の打席では中犠飛で貴重な追加点。9回も抑えの西村を巧みにリードし1死二、三塁のピンチを2連続三振で切り抜けた。
須藤氏は「若いバッテリーとベテランバッテリー、それぞれの味が出ていた。両捕手が切磋琢磨していけばチームにも活気が出る」と小林の突き上げを歓迎。ドラフトで外れ1位で巨人入りした遅咲きルーキーは、長らく停滞していた正捕手争いを活性化する“大当たり”だった。 (笹森倫)
取材中、分厚い胸板と太い腕が気になってしようがなかった。今春の第86回選抜高校野球大会で初優勝を果たした龍谷大平安の原田英彦監督(53)。母校を率いて21年で、「平安ファン」を公言してはばからない。ユニホームがはち切れんばかりの筋骨隆々の風貌が目を引き、母校を敬愛して止まない原田監督の個性に心がひかれた。
胸囲は114センチ。肉体を鍛え抜いた日本新薬の社会人野球時代を、「(胸の筋肉に)腕が引っかかってインコースが打てなくなった」と冗談めかして振り返る。現在でもベンチプレスは100キロを軽々と持ち上げるといい、「腹筋は絶対に部員たちには負けない」と豪快に笑い飛ばす。
同校は2008年に「平安」から「龍谷大平安」に校名を改称した。それでも、「平安の原田です」と自己紹介するポリシーを持つ。母校への熱い思いにあふれる逸話は数多くある。
実家の近所に同校があり、小学4年のときにユニホームにあこがれたという。少年野球のチームを作った際はペンで「HEIAN」と書いた。「Eの3本の横線は同じ長さにした」といい、そのこだわりは少年時代から筋金入りだ。現在着用するユニホームは「青光りする生地」や「長めの袖」を採用する特注品。遠征以外の試合は、前夜に自宅でアイロンをかけてから試合に臨むほどだ。
原田監督は今回のチームに「初めて(目標を)日本一と言い続けた」という。その理由のひとつにこんな出来事があった。
「どこの誰や!」
昨春の選抜大会。龍谷大平安は早実(東京)との初戦で逆転負けを喫した。試合後に、客席から辞任を求める内容のやじを受けた原田監督が“応戦”してしまう一幕があった。
「情けない敗戦をして、すごく悔しかった」と原田監督。伝統校であり、オールドファンも多いだけにプレッシャーは計り知れない。だが、なにくそという根性が、チームをより強くしようとする思いにつながったのは想像に難くない。
昨秋、練習場「龍谷大平安ボールパーク」のバックネットに「全国制覇」の文字が掲げられた。選手たちは「バックネットを見ろ」「頑張っていこうや」と声をかけ合った。その姿を頼もしく見ていたという原田監督。以心伝心で勝ち取った紫紺の優勝旗だった。
決勝を終えた甲子園のグラウンド。日本一の夢をかなえた余韻もほどほどに、「追われても追われても離していくチームを目指す」と夏へ向けての思いを新たにしていた。
あらためて「情熱」という言葉が持つ力の強さを思い知った。“ファン”の端くれにもおけないが、原田流の野球にもっと触れてみたい。(吉原知也)
「皆さん!(11日からの)マツダスタジアムにもぜひ来てください!」
10日のヤクルト戦で決勝2ランを放った中日の平田がお立ち台でファンに呼びかけた。
4番が打って、今季初の本拠地ナゴヤドームでの3連勝。勝率も5割に戻した。
勢いに乗るチーム状況とは対照的に、この日のナゴヤドームは空席が目立った。この客入りを平田も心配しているのだろう。
主催9試合を終えて、1試合平均の観客動員は前年比で345人増で微増にはなっている。ただ、Bクラスに転落した高木前監督時代とは違い、今年は谷繁兼任監督が就任。常勝時代を率いた落合GMが復帰し、巨人から小笠原を獲得した。強いドラゴンズの復活を期待されての新体制であることを考えれば、ちょっと寂しい。
■今季から「大入り袋」も廃止
「そりゃそうなりますよ。ナゴヤの応援は、応援団が『プロ野球暴力団等排除対策協議会』の許可を得られないとして、鳴り物が禁止状態。一方で対戦相手は鳴り物をガンガンやっている。雰囲気を楽しみたい中日ファンとしては、イマイチ盛り上がりに欠けても仕方がない」(中日OB)
球団は今季から、“キャッシュレス化の一環”として関係各位に配布していた「大入り袋」の廃止を決めた。あるいは、大入り満員が期待できないと考えたのかもしれない。
一度離れたファンを呼び戻すのは、一筋縄ではいかない。