「オールスターは遊びじゃない。真剣勝負で、それを楽しみにしているファンも多いんだから」
試合前の全体ミーティングで、全パ伊東勤監督(51)が声を大にした。
試合は7-0で全セが勝ったが、出てくる投手はなんとかのひとつ覚えのように直球勝負を繰り返し、一塁ゴロでタッチされそうになった中村(西武)が本塁方向に逃げると球場は爆笑の渦。かつてセとパが鎬を削った球宴も、近年は選手たちによる「なれ合い」の場と化している。
昨年は中田(日本ハム)の打席で、投手の藤浪(阪神)に内角へのスローボールを2球続けて投げるよう西岡(阪神)が指示した。2球目が中田の背中を通ると、ガン黒の中田が顔を真っ赤にして激怒――という、大阪桐蔭出身選手たちによる茶番が演じられた。12年の球宴でも、阿部(巨人)が打席で大道(現ソフトバンク二軍打撃コーチ)のフォームの物マネ。ベンチの選手は笑い、まっとうなファンは首をかしげていた。
■「出たい人を出した」
選手からすれば「ファンサービス」かもしれないが、そんなおふざけを喜ぶファンが多くいるとは思えない。この日は昨年までのようなバカ騒ぎはなかったものの、伊東監督があえて「遊びじゃない。真剣勝負」と当たり前のクギを刺さなければいけないのが、今の球宴の現状なのだ。
選出された選手がマトモに出場できないのも問題だ。伊東監督はこうも話していた。
「(スタメンは)基本的にファン投票の選手中心にと思っているけど…中村(西武、一塁部門1位)と浅村(西武、二塁部門1位)はケガで守れないし。中田(外野部門2位)もコンディションが悪いっていうからなあ…。もう出たいって言う人を出したいよ」
最後は半ばヤケクソになっていた。伊東監督が現役時代に16度出場した球宴では、同じパの選手同士ですら手の内を隠していた。
「投手はウイニングショットは絶対に投げてくれなかったよ。サインも直球とカーブだけ。情報収集はしたね。打者に探りを入れて、リードの参考にしたり、
球団に報告したり。でも、今の選手は仲が良いから、もうそれはないかもね。昔の方が緊張感があった」(伊東監督)
この日、地上波中継したテレビ朝日は21時で放送終了。七回裏でも予定通りに打ち切った。続きは系列のBS、CSでも放送せず。視聴者はたまったものではないが、今の球宴はその程度のコンテンツというのがテレビ局の認識なのだろう。
来年から球宴が消滅しても、NPB以外は誰も困らない。