決勝の舞台、聖地マラカナン競技場へとつながる最終ステップで、カナリア軍団の夢と希望は無残に打ち砕かれた。「歴史的な負け。人生最悪の試合だ」とブラジルのスコラリ監督。1-7。悲願の自国制覇に王手を懸けるはずの一戦で、信じられないスコアが刻まれた。
前半も半ばに早々と勝負は決まった。29分までに5失点。守備網が壊滅し、ネイマールを欠いた攻撃陣もまったく迫力がない。終了間際にオスカルが一矢報いるゴールを決めたが、焼け石に水。試合終了の笛が鳴り響くと、マルセロはしゃがみ込んで起き上がれず、ゲームキャプテンのダビドルイス、オスカルはあふれる涙をぬぐった。
準々決勝のコロンビア戦。ネイマールが悪質な膝蹴りで脊椎骨折の重傷を負い、担架で運び出されたシーンは悪夢でしかない。スコラリ監督は「われわれは国のために、そしてネイマールのために戦う」と決意を込め、累積警告で準決勝は出場停止だった主将のチアゴシウバも「ネイマールとともに心はピッチにある」と悲壮感を漂わせた。
この日、指揮官や選手たちは「FORCA NEYMAR」(頑張れ、ネイマール)とメッセージが入った帽子をかぶってスタジアム入り。無念の離脱を余儀なくされたチームメートを励ましたが、悲運のエースが抜けた穴は、あまりにも大きかった。
初めてW杯を自国開催した1950年大会は、最終戦でウルグアイに栄冠をさらわれた。「マラカナンの悲劇」と呼ばれる負の記憶を振り払い、歓喜に塗り替えるのが「セレソン」に課せられた使命だった。
スコラリ監督は「プレッシャーはなかった。この惨劇の責任は私にある」と強調した。威信をずたずたにされたサッカー王国。64年ぶりの自国開催で、消し去ることのできないもう一つの“汚点”をつけてしまった。(細井伸彦)