サッカーW杯ブラジル大会は5日から準々決勝が始まった。海の向こうの熱狂とは無縁の寂しい夏を迎えているのが、1次リーグで1勝もできずに帰国した日本代表だ。世界のレベルを思い知らされ意気消沈のイレブンだが、ピッチ外ではいまだに「負けられない戦い」を繰り広げている。日本全国の書店で、各選手が本番前に発売した著作の販売合戦が展開されているのだ。
「とにかくこれが現実なんでね。非常にみじめですけど、すべてを受け入れてまた明日から進んでいかないといけない」
1次リーグ最後のコロンビア戦後、こう語った本田圭佑選手(28)。早すぎる終戦もさることながら、ビッグマウスを連発してきたエースの口から、威勢のいい言葉が聞こえなくなったことも寂しさを一層深めている。
そんななか、代表イレブンの、はつらつとした姿をいまだに拝めるのが出版市場。各選手の著作の数々が、書店でしのぎを削っているのだ。
「主力の多くが大会本番にタイミングを合わせて本を出している。1次リーグ敗退までは書店でも特設コーナーが設けられるなどW杯特需を当て込み、出版ラッシュが起きていた」(出版関係者)
GK川島永嗣選手(31)の『準備する力』(KADOKAWA)や、DF今野泰幸選手(31)の『道を拓く力』(日本経済新聞出版社)のように自身の体験をベースにした自己啓発本のほか、伊インテルで活躍するDF長友佑都選手(27)によるトレーニング本『体幹トレーニング20』(KKベストセラーズ)まで、バリエーションは豊富。
甘いルックスで女性人気の高いDF内田篤人選手(26)は、エッセー『僕は自分が見たことしか信じない』(幻冬舎)で、自身の寝姿や上半身ヌードも披露した。
「代表本があふれかえった理由の1つは、2011年に発売されたMF長谷部誠選手の『心を整える。』(幻冬舎)が爆発的なヒットを記録したのが大きい。増刷を繰り返し、累計で140万部以上を売り上げている」(同)
本番ではいい所がなかったイレブンだが、ピッチ外の収支はどんなものだったのだろうか。
川島選手の著作を出版したKADOKAWAの担当者は「単行本と文庫あわせて14万部」。土壇場で代表入りを決めて1次リーグ3戦すべてに出場したFW大久保嘉人選手(32)の『情熱を貫く』(発行・フロムワン、発売・朝日新聞出版)は「代表招集後に売り上げが急増した影響もあって10万部売れている」(フロムワン担当者)という。
“長谷部本”の後発組で最大のヒットとなったのは、長友選手のトレーニング本だ。
出版元の営業担当者は「今年4月の発売以来、順調に売れ続け、現在までに50万部を売り上げた。代表が敗退した後も売れ行きに変動はない。自伝というよりは実用書としての側面が大きいので、ダイエット志向の方など、いろんなお客さまに手に取ってもらえている」と明かす。
これまでに写真集を含めて3冊を出版した内田選手の本も「出版部数は累計で30万部。むしろ敗退後に売り上げが伸びた。過去に出版したものも相乗効果で売れて重版が決まった」(幻冬舎担当者)という。
業界の通例では売り上げの10%前後が印税として著者に払われる。
長谷部選手は「1億4000万円は下らない」(冒頭の出版関係者)という印税を全額、ユニセフに寄付したのは有名な話。他のイレブンの臨時収入も気になるところだ。