最下位に低迷している楽天。星野仙一監督(67)が病気療養中のため、5月下旬から佐藤義則投手コーチ(59)が監督代行を務めていたが、成績が上向かないことから、今月2日から“デーブ”大久保博元2軍監督(47)に代行が交代するドタバタぶり。昨季の日本一球団に、一体何が起こっているのか。上昇の目は残されているのか。阪神、楽天などで一昨年まで投手として活躍し“仙台在住評論家”として古巣を中心に取材活動を行っている山村宏樹氏(38)が分析した(記録は10日現在)。
大久保代行は、就任にあたって「星野監督のやりたい野球はわかっている」と継承を強調したが、星野監督が指揮した今季47試合および佐藤コーチ指揮下の22試合と、大久保代行による8試合(3勝5敗)では、戦術に明白な違いがある。山村氏がこう指摘する。
「星野さんは送りバントが嫌い。投手出身監督に見られる傾向です。投手の立場からいうと、制球の安定していない序盤などに相手が送りバントをしてアウトを1つくれると、非常に楽になる。逆に攻撃のときには、アウトを簡単に1個献上したくないという発想になるのです」
さらに「昨季は星野流の“打ってつなぐ”やり方が奏功した。佐藤さんの考え方も同様。対照的に、野手出身のデーブさんは送りバントに積極的。打者目線では、走者を一塁に置いたままだと併殺打の可能性があり、精神的重圧がかかるから。野球観の違いは明らかです」
実際、大久保代行就任前、楽天のチーム犠打は両リーグを通じ最少の44。1・6試合に1犠打の割合だった。ところが大久保代行は、3日のオリックス戦での1試合4犠打など、8試合で11にのぼる。
そもそも、昨季日本一の楽天が低迷しているのはなぜか。
「確かに(昨季24勝0敗1セーブの)田中(将大)が抜けた穴は大きいが、他の投手で埋めることは計算上不可能ではない。昨季楽天は82勝59敗3分けで“貯金23”。田中1人で稼いだ貯金24を差し引いても、勝率5割近い数字が残るはず。そこから他の投手が1勝ずつ上積みし、さらにリリーフ陣に3、4勝する投手がいれば、少なくとも5割を切ることはない」
だが、現状は計算通りになっていない。「田中よりマギー(現マーリンズ)の抜けた穴の方が大きい。144試合に出場し打率・292、28本塁打、93打点をマークした5番打者の役割は分担が利かない。代役のユーキリスも故障で離脱。今季は点が取れない。投手陣に重圧がかかっています」と分析する。
そんな中、球団は6月に5番候補として新外国人ラッツを獲得した。山村氏は「三塁を守れるラッツが加入したことによって、銀次が本職の一塁に戻れる効果が大きい。銀次は三塁守備にも前向きに取り組んでいましたが、一塁に比べると打球は強い、連係プレーが多い、神経も使う。マギーに代わって今季三塁を守ることになった時点で、打率は落ちるとみていた。腰を痛めて一時、戦線離脱したこともコンバートと無関係ではないと思います。一塁に専念できれば、去年並みの数字(打率・317)は間違いない。打線全体も本来の流れを取り戻すのではないでしょうか」
「借金15は大型連勝がないと返せない数字ですが、当面はチーム一丸で勝率5割を目指してほしい。最終的に借金3-5でも3位に入れるとみています」という山村氏。
「何といっても星野さんは日本一に導いた指揮官ですから、早く戻ってきてもらいたいのが選手の偽らざる気持ち。代行が変わったことで、正直『大丈夫かな』という不安も生まれているでしょう。チームというものは負けが込み、目標を見失うと和も乱れますから、どう一枚岩になれるか」
苦境を託されたデーブ代行の責任が重大であることは、間違いない。
■山村 宏樹(やまむら・ひろき) 1976年5月2日、山梨県生まれ。94年に甲府工高からドラフト1位で阪神に入団。99年オフに戦力外通告を受け、近鉄にテスト入団。翌年に6勝(9敗)を挙げ、オールスター出場も果たした。2004年オフ、近鉄とオリックスの球団合併などの球界再編の中、分配ドラフトで楽天に創立メンバーとして参加。12年限りで現役引退。通算31勝44敗2セーブ。宮城県仙台市在住。宮城ローカルのスポーツ番組でキャスターを務めるほか地元紙、スポーツ紙などで評論、コラムを執筆している。