なりふり構わぬパワープレーは迫力があったが、ベルギーの見せ場はそこだけだった。1点を追う終盤、バンビュイテンにフェライニ、ルカクと190センチ台の3人を前線に並べ、ロングボールを次々にほうり込む。だが、アルゼンチンの堅い守備にはばまれ、最後までゴールネットは揺らせなかった。
前半8分、コンパニーの不用意なミスが招いた失点が重くのしかかった。メッシからディマリアへとつながれ、最後は意図せぬ形でイグアインの前にボールが転がり込んだが、これをきっちりと決められた。
ウィルモッツ監督は「こういう大会では、小さなミスで高い代償を払わされることになる」と実感を込めた。23歳のアザールを筆頭に才能に恵まれた若手がそろうタレント軍団も、W杯は3大会ぶりの返り咲き。優勝2度のアルゼンチンが先手を取れば、手玉に取るのはたやすかったかもしれない。
28年ぶりの4強入りは果たせなかったが、1次リーグを3連勝で首位突破。主将のコンパニーは「すばらしい冒険だった」と振り返り、指揮官は「ベスト8の中で最も若いチーム。彼らが成し遂げたことを誇りに思う」とねぎらった。一時期の低迷を脱した“赤い悪魔”。王国での躍進をきっかけに欧州列強に加わるか。(細井伸彦)