役力士と当たるのは初めて。しかも大関。にもかかわらず、エジプト出身の大砂嵐は「いつもと一緒」と言い切った。得意とする右のかち上げで、稀勢の里に先制攻撃を仕掛けた。
顔にまともに食らった大関は「パワーというか、タイミング。どんぴしゃでしたね」と苦笑いした。来ると分かっていても食らってしまう。一つの“技”といえる。
はまれば主導権を握れるが、脇が空いてやすやすと中に入られる危険性もある。案の定、経験豊富な相手に左を差され、寄りをこらえることはできなかった。
スピード出世のアフリカ大陸出身初の関取。力に頼った荒々しい取り口には賛否両論あるが、師匠の大嶽親方(元十両大竜)は「かち上げどうこうの前に、まだ相撲は雑でおおざっぱ。でも、それが大砂嵐の味としていいのかな」と静観している。
確かに22歳にはがむしゃらさがある。イスラム教のラマダン(断食月)で日中の飲食ができない今場所、格上にも立ち合いの信念を貫き通している。敗れはしたが、大関相手に学べることがあるかと問われ「そんなことはない。自分の夢を持っていますから」と力を込めた。
相撲界に入った頃から公言してきた“横綱”を目指す夢は、上位とぶつかる位置まで番付を上げた今でも変わらない。(藤原翔)