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2025.07.27|コメント(-)トラックバック(-)

元川悦子の一蹴入魂:香川、ゲッツェのゴールを刺激に…


バイエルン・ミュンヘン勢を軸にボールを支配し攻めを組み立てるドイツに対し、最終ラインを統率するデミチェリス(マンC)や攻守の要・マスチェラーノ(バルセロナ)を軸とした組織的守備で応戦するアルゼンチン。まさに一進一退の攻防が続いた13日の2014年ブラジル・ワールドカップ(W杯)決勝の決着をつけたのは、延長後半8分のマリオ・ゲッツェ(バイエルン)の値千金の決勝ゴールだった。アンドレ・シュールレ(チェルシー)の左サイドの突破からのクロスを胸トラップして左足で蹴りこんだこの一撃は、老獪な戦いを見せていたアルゼンチンを沈めるのに十分すぎた。

「(ボルシア・)ドルトムント時代の選手もいるので、彼らの活躍を楽しみにしていますし、ぜひドイツに優勝してほしいです」と、12日に川崎市で行われたイベントでこう語ったという香川真司(マンU)は、かつての盟友の大活躍を喜ぶとともに、どこか悔しさは感じているに違いない。

香川がドルトムントユースからの生え抜きであるゲッツェと出会ったのは、2010年夏。彼が南アフリカW杯で日本代表落選の屈辱を強いられ、ドイツで再出発を切ったときだった。ユルゲン・クロップ監督の抜擢に応えた香川は開幕から凄まじいゴールラッシュを見せ、瞬く間に攻撃陣の中核に。この時点では彼の存在感はゲッツェを上回っていた。その香川が2011年アジアカップ(カタール)で右足第5中足骨を骨折し、長期離脱すると、指揮官はゲッツェを重用。若きアタッカーはブンデスリーガ制覇に大きく貢献した。翌2011-12シーズンはゲッツェがケガで離脱を強いられる時期が長かったものの、2人の息の合ったコンビが光る場面は少なからずあった。レヴァンドフスキ(バイエルン)、グロスクロイツ(ドルトムント)らとともに見せた最高の連携、そしてリーグ2連覇の歓喜を香川自身も忘れたことはないはずだ。

そして2012年夏、香川は一足先にユナイテッドへステップアップ。ゲッツェも1年遅れて2013年夏に憧れのバイエルンへ移籍した。世界屈指の名門へ赴けば、ドルトムント時代のようにコンスタントに試合出場は叶わなくなる。その状況は香川もゲッツェも同じだった。実際、昨季のゲッツェはリーグ戦27試合に出場。ジョーカー的な使われ方が多かったものの、10ゴールをマークした。香川もファーガソン監督が率いていた2012-13シーズンは20試合に出場し、6ゴールを挙げた。移籍1年目の2人の数字はそこまで大きな差はなかった。

けれども、香川の場合はご存じの通り、2シーズン目の昨季にサッカー人生最大の苦境に直面した。シーズン無得点という信じがたい結果に終わり、持ち前の得点感覚に陰りが見られたのは確かだ。その影響がブラジル本大会にも如実に出てしまった。ザッケローニ監督が不振の香川を第2戦・ギリシャ戦(ナタル)で先発から外したのも本人にとっては大きな衝撃だっただろうが、今大会の彼はあまりにも良さを出せなさすぎた。ファイナルで世界を震撼させる一撃を決めたゲッツェとの明暗が大きく分かれたのも、やはりW杯前のシーズンの出来不出来による部分が大だったのではないか。

だからこそ、香川は次の4年間はコンスタントにクラブで活躍できる状態に持っていく必要がある。新シーズンのマンUはオランダを今大会3位に導いたルイス・ファン・ハール監督が指揮を執ることになる。昨季までの主力であるルーニー、ファン・ペルシは残留し、昨季途中に移籍してきたマタもいる。今大会を通して存在感を発揮したベルギー代表フェライニやエクアドル代表バレンシアもいる。若く成長著しいヤヌザイ、アスレチック・ビルバオからの移籍組のエレーラもポジション争いに加わってくる。ブラジル大会で良いところをほとんど見せられなかった香川は非常に厳しいスタートを強いられるだろう。

「世界と戦う上で、本当のトッププレーヤーであったり、相手に脅威を与えられる選手、チームの雰囲気っていう意味では、自分は世界の強豪とやったときに差が出てしまっている。そこをつかみ取るには一人ひとりが所属クラブで勝ち取っていくしかないのかなってすごく感じます」と最終戦・コロンビア戦(クイアバ)で惨敗した後、本人もしみじみ語っていた。だからこそ、3シーズン目となるユナイテッドでは死ぬ気で戦っていくしかない。

すべての力を出しても出場機会をコンスタントにつかめないのであれば、レンタル移籍を志願して、自分の力を発揮できる環境に移るのも一案だ。もちろん移籍金の問題などもあるだろうが、サッカー選手として最も脂の乗った今の時期をベンチで過ごすことはマイナスだ。香川にとって次の4年間の一歩となる今季がどうなるのかが大いに気になる。いずれにしても、短期間で開いたゲッツェとの差を埋めて、形勢逆転するくらいの勢いを、彼には今一度、見せてほしいものだ。


文/元川悦子
1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。



(C)Goal.com

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2014.07.15|コメント(-)トラックバック(-)
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