太平洋を渡った日本球界のトッププレーヤーの中には、適応できなかったり、故障に見舞われたりして、約束されたメジャーから「失格」の宣告を受け、マイナーでもがいている選手がいる。なかなか動静が分からない彼らは今-。
朗報が聞こえてきた。渡米3年目にしてようやくメジャー初登板を果たのが和田毅。8日のレッズ戦ダブルヘッダー第2試合に初先発して5回1失点。勝ち投手の権利を持って降板したが、ナ・リーグ中地区で最下位に沈むカブスの貧弱な救援陣が炎上して、初白星はならなかった。ダブルヘッダーによる1日だけの特別昇格で、直ちにマイナーに戻った。
期待されるローテーションの左腕としてオリオールズに入ったものの、肘に痛みが生じ、2012年5月にトミー・ジョン手術。1試合も投げないまま昨オフ、オリオールズをクビ。カブスにマイナーで拾ってもらった。痛みが引き、肘の不安がなくなると徐々に本来の実力を発揮し始め、傘下3Aアイオワでしっかりローテーション入り。9勝。防御率2.55。1イニング当たり1個以上の三振を奪うなど、安定度抜群で、昇格の条件である40人枠に入った。
やっと訪れたチャンスを見事クリアした和田。自身のブログで実感のこもった発言を繰り返した。「年甲斐もなく、緊張してしまいました。ようやくスタートラインに立つことができました。また3Aですが、またチャンスがもらえるように自分の課題を克服していきます」
レンテリア監督は「ワダはいい仕事をした」と合格点を与えており、後半戦で「真のメジャーリーガー」となる可能性は大だ。
同じカブスのマイナーにはもう1人、日本投手がいる。超人気球団、阪神の絶対的守護神だった藤川球児。カブス入団後、華々しくデビューしたものの、久しく名前を聞かない。和田と同様、昨年、トミー・ジョン手術を受け、今はDLに入ってリハビリの真っ最中。自らのブログで、「一歩一歩復帰に向けて進んでいます。まだ移植した部分がもう少し馴染むのに時間がかかりますね。球速は148キロくらいですかね。全然全力ではありません」。メジャーのマウンドに立つのは当分先、早くても秋口になりそう。カブスは今のところメジャーの40人枠には入れているが、来季契約の選択権は球団にある。
投手に光が見えている一方で、野手はもがき、あえいでいる。
レンジャーズ傘下の3Aラウンドロックでプレーするのが田中賢介。ここではチームの中心メンバーとして外野を守る。米球界の常で時たま与えられる休養日以外は先発でプレーしている。とはいえ、打率は2割6分前後。メジャーへの道は遠い。
日本では二塁手で守備の勲章ゴールデングラブ賞を何度も受賞するほどだったが、天然芝のグラウンドと打球の速さ、激しい走塁に対応できず、内野は失格宣告。外野に活路を求めてコンバートを受け入れた。
移動も激しいマイナー暮らしは厳しいの一言。今年3月以降は、頻繁に更新していたブログも止まったまま。チームのツイッターで勝利に貢献したときに写真入りで紹介される程度。
田中賢以上に苦闘しているのが中島裕之。今季は、メジャーの春季キャンプに呼ばれることもなく、アスレチックス傘下の3Aサクラメントでプレーしていたが、打率1割2分台と結果が出ず、4月末には2Aミッドランドに降格されてしまった。ここでも打率2割7分台、長打率は3割7分台と苦戦している。
西武で着実に不動の内野手への階段を登っていた13年オフにアスレチックスと大型契約を結び…とここまではよかったが、春季キャンプで日本で見せたような成果が発揮できず、ケガも重なって ついに同球団のビリーGMから「ナカジマの獲得は失敗だった」と言われるまでになった。メジャーへの道は遠のくばかりだ。
イチローと松井秀喜以外は日米の力の差を見せつけられて、野手はすっかりマイナーに“定着”しつつある。何が彼らを今の境遇を支えているのだろうか。