ヤンキースは10日(日本時間11日)、右ひじを痛めて故障者リスト(DL)入りした田中将大(25)が右ひじ内側側副靱帯の部分断裂と診断されたと発表した。リハビリプログラムをこなしながら6週間後の復帰を目指すが、症状に回復が見られない場合は、「トミー・ジョン手術」に踏み切る可能性もあるという。
田中はここまで18試合に登板して12勝4敗、防御率2・51。順調なスタートを切った田中のひじがパンクしたのはなぜか。メジャーならではの環境がひじに負担をかけたのは間違いない。
メジャー公認球は日本の統一球と比べて大きくて重い上に、材質の違いから滑りやすい。ただでさえ扱いづらいボールを正確にコントロールしなければならないのだから嫌でも右腕に負担がかかる。
中4日の登板間隔も大きかった。日本は1週間に1回、つまり中6日で投げるのに、メジャーは中4日。100球が目安とはいえ、日本人大リーガーのほとんどが最初に戸惑うのは登板間隔が2日も短縮される点だ。
■過去35年で最多の投球回数
ヤンキースのチーム事情も負荷をかけた。エース左腕サバシアを筆頭に開幕時の先発投手3人が早々と離脱。ベテラン右腕の黒田は春先、調子が上がらず、田中は孤軍奮闘を強いられた。首脳陣は先発3~4番手のポジションで徐々にメジャーに順応させるつもりだったものの、田中はいきなりエース級の働きを求められた。
7年総額161億円の大型契約も原因だ。ヤンキースはメジャー屈指の人気球団で、ファンやメディアの目は全米で最もシビア。成績が年俸に見合わなかったり、期待を裏切ったりした選手は容赦のないバッシングの嵐にさらされる。投手ではサバシア(7年総額約164億円)に次ぐ大型契約を結んだ田中の右腕には、勝って当然のプレッシャーが重くのしかかっていた。
そもそも日本での登板過多を危惧する声も多かった。楽天時代の7年間、レギュラーシーズンだけでも投球回数は1315・0回。昨年12月、田中がポスティング公示された際、米スポーツ専門誌「スポーツ・イラストレーテッド」(電子版)は「この年齢(25歳)でこれほど投げている投手はメジャーでは過去35年間いない」と指摘。9日付のスポーツ専門局「ESPN」(電子版)は日本での7年間と今季の合計が1444回3分の1になるとし、「今回の故障は『投げ過ぎ』の兆候ではないか」と報じた。
■「リスクを承知で獲得」
特に昨シーズンはヒドかった。開幕前にWBCの調整を強いられ、ペナントレースに入ってからは24連勝。日本シリーズでは第6戦で160球投げた翌日の第7戦にリリーフ登板までしている。活躍は隔年だったこともあり、ヤンキースのキャッシュマンGMは獲得時に「昨季の登板過多? 不安は否定しないが、タナカの才能と年齢、スカウトの報告を含めてリスクを承知で獲得した」と話した。実際、ヤンキースのスカウティングリポートには「2年以内に故障する可能性もある」と記されていたといわれる。
田中の故障はあくまでも「想定内」。その時期が少し早くなっただけというのがヤンキースの受け止め方というのだが……。
日刊ゲンダイ